「そんな嫌そうな顔すんな、俺がサインしたら女の子みんな喜ぶんだぞ」



どこのアイドルだ。



「その “ みんな ” に私は含まれてないので覚えといてくださいね」





いらっとしたけどさすがに先輩にキレる訳にもいかず私はウエットティッシュでごしごし手の甲をこすった。



まあ、消えなかったけど。





「出身はすぐそこの中学。ここ地元。家近所」





私は隣町出身だから幸い家は遠いらしい。



まあこんな人が地元にいたら色んな意味で目立ってるか。





「高3の18サイ。帰宅部。ひとりっこ。AB型。身長182センチ。誕生日はクリスマス。んー、あとなんだろ」



「別にもういいですよ」





そんなひねり出してもらうほど情報に飢えてない。


そしてどうせ覚えられない。





「いやぁドライだね〜」



「そうでもないですよ」




なんてニコって笑ってやった。