龍臣先輩の一言に頭が真っ白になる。




“ 俺は好きだよ ”


そういった。龍臣先輩と違って聴力は普通だけど、絶対にそう言った。

これが夢じゃないのなら。




「……きです」


「聞こえない、もう一回言って」




地獄耳のくせに。絶対聞こえてるくせに。


それでも龍臣先輩の幸せそうな真っ赤な笑顔につい私も頬が緩んだ。




「すきです」




はじめて口にしたこの言葉に、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。




「俺も好き」




夢のようだ。

というか、夢なんじゃないかな。




なんて思って頬をつねっても覚める気配はなかった。




「夢じゃないよ、何してんの。ほっぺ腫れるからやめなさい」




いつもは自分が私のほっぺをつまむくせに、こんな時だけ心配してくる。


夏木龍臣はやっぱりズルい男だ。




「今日から彼女」


「…カ、ノジョ」


「ふはっ、初心だな」




龍臣先輩は笑って私の頭をなでる。


感情が高まって涙腺まで緩んで、真っ赤な顔で泣くという意味の分からない状況になったのは二人だけの秘密らしい。





――こうして、私は学校のアイドル夏木龍臣先輩の彼女になった。