「咲結」




龍臣先輩の穏やかな声が私の胸を高鳴らせる。



やだ、やだ、バレたくない。




私が先輩のこと好きになってしまったなんて、誰にも言わないつもりだったのに。


本人に言う日が来るなんて思ってすらなかったのに。


墓場まで持っていくくらいの覚悟だったのに。




「こっち見て」



「…や、です」



「むり」




龍臣先輩の強い力によって私は体の向きをかえられて。


必死の抵抗もむなしく、顔を隠していた腕もどけられた。





「ふは…顔真っ赤」



「…うるさい」



「好きじゃん、俺のこと」




龍臣先輩が何を思っているのかわからない。


でもその一言でまた顔がカッと赤くなる。




「……え?」


「…」




そして自分で言ったくせに私を見て呆然とする龍臣先輩。




「……冗談でしょ?」


「…」




「好きなの?俺のこと?咲結が?」




恥ずかしすぎて、死にそう。


どくどくうるさい心臓も破裂してしまいそうなくらい暴れていて。




「ねえ咲結」







「……っ好きで悪いか!龍臣先輩のバカ!」






そうしてまた限界を迎えた私の口は滑ってしまうのだった。



「……はぁ」




龍臣先輩はため息をついてずるずるとしゃがみこむ。



首に腕を回されて、さらに体重までかけられた私ももれなく巻き添えだ。