「安堂ー、コーチが呼んでんぞー」



「あ?いまいくー。ちょっと待ってて有明、打ち上げ一緒に行こうぜ」



「うん翔琉俺もいるからね。忘れないでね」





佐藤くんが制服のシャツの裾を引っ張ると安堂くんはうっせバーカと言って教室を出て行った。




「…」


「ごめんね俺と二人になっちゃって!気まずいよねごめんね!?」




一瞬の沈黙を破ったのは佐藤くんだった。


いつのまにか麻里奈も消え、二人になった教室の気まずさを取り払ってくれるらしい。




「いや、そんなことは…ないよ、佐藤くん」


「俺の名前知っててくれたんだ、うれしい」


「そりゃクラスメイトだし…」




みんなして私を何だと思っているんだろう。



「…時に有明さん」

「…なんでしょうか」




なんだその変なしゃべり方、って思ったけど佐藤くんは真面目な顔をしていたから突っ込めなかった。




「さっき聞いちゃったんだけど、ハチマキのこと。…3年の夏木先輩と付き合ってるの?」


「付き合ってないよ、図書委員の先輩ってだけ……」




だけって、その言葉が引っ掛かった。



私にとって龍臣先輩はただの “ 図書委員の先輩 ” なんだろうか。

…いや、少なくともそれはちょっと違う気がする。