無理、俺にして

*紫乃side*


「知りたい」


確かに目の前の男はそう言った。

いつもはここで目をそらして、またバカみたいな話をし始めていたはずなのに。
まっすぐ俺の目を見て確かにそう言った。


「……」


ベージュの髪は、少し汗で湿っている。
そのせいで赤みがかった目がしっかり見えて、その目の奥が燃え上がっていて。

どれだけ彼が真剣な気持ちでいるのか痛いほど伝わった。

……わかったから、そんな本気になるなよ。


「で? 何が知りたいんよ」

「えっ、えっと……」


は。

自分から聞いてきておいて何今更動揺してんの?

いつもならここでからかいのひとつやふたつ入れていたところだ。
でも、今はさすがにそんな雰囲気じゃないことくらいはわかる。

というか、今までつるんできた奴らとだってそうならないようにしてきた。
なりそうになったら、離れてきた。


遅かれ早かれ、秋音ともこうなりそうだと思ったのは、あの屋上での一件があった時。

もう少し秋音と距離をとるか、なんて思いながらも、いつも通りの距離感で過ごしてしまった自分が悪い。
だからこうして秋音の「知りたい」という気持ちに、最低限答える必要があると思った。

面倒くさいけど。

死ぬほどだるいけど。