無理、俺にして


意外と普通に話せてる、のに。

なんだろう、表情が見えないのにすごくドキドキする。
全部の感覚が耳に集中してるからなのかな。

男の子との電話って、こんな感じなんだ……。


「今日だけでアンタのやりたいこと結構できたネ」


……あ。

電話の向こうで、くふ、って笑ったのが聞こえた。


「電話もしたかったんでしょ?」


やっぱりそう言うと思った。
でも、これは素直に嬉しい。
電話ができたことももちろんだけど、今こうして、折原くんと話せているのが嬉しい。


「う、ん。ありがとう……」

「あーいや、こちらこそ、ごちそうさまでした」

「え?」

「ハンバーグめっちゃんまかった」

「あっ!!」


……そうだ、そうだ!!
今日のお昼、あんな感じで結局お昼食べられなくて、しかもお弁当持って帰るの忘れてたんだ!!

折原くんのワイシャツの事で頭いっぱいで、お弁当箱のことすっかり忘れてたよ……。


「かーちゃんに怪しまれんかった?」

「え」

「ほら、俺のシャツも結局そっちにあるし、弁当箱だってないと不自然だってならん?」

「あ、今日はお母さん帰ってこないみたいだから、大丈夫だったよ」

「……そーなん?」

「うん、お弁当も自分で作ってるから、特に怪しまれるようなこともないし、ほんとに大丈夫!」

「そっか」


不思議だ。

電話越しだと折原くんの声がいつも以上に優しく聞こえる。

やっぱり心地いい。イヤホンするんだった。