無理、俺にして

「初めまして。ゆめさんとお付き合いさせていただいています、折原紫乃です」

「……」


『初めまして』と。
知り合いのはずのお母さんに、初めましてと言って。

普段聞かない真面目な声、真面目な顔。


「俺は、まだまだガキだからきちんと守ってやれないかもしれないけど。絶対泣かせない」

「っ」

「嘘も吐かないし、悲しませない。絶対に泣かせない」

「折原くん……」


聞けば、折原くんに声をかけられたときのお母さんは
ひどい顔をしてぐしょぐしょに泣いてしまっていたのだとか。

お父さんの、お母さんに対する優しい嘘のせいでお父さんを嘘つきだと言って泣いて。

泣いて、泣いて、泣いているところに折原くんが声をかけてきたんだと、お母さんは言っていた。

きっと、お母さんの『私と同じ思いをしてほしくない』という私に対する気持ちが、そんな優しい気持ちが折原くんは誰よりも分かってしまうから。


「これからも、ゆめさんの隣にいさせてください」


お母さんに向かって頭を下げる折原くん。

さっきの病室での私とは比べものにならないくらい凛として、堂々として。


「……っ」


とてもかっこよくて。


「こちらこそ、娘をよろしくお願いします」


お母さんも折原くんに向かって頭を下げる。


「お、お願いしますっ」


私も、二人と同じようにぺこりと頭を下げた。