無理、俺にして

お母さんの表情が陰る。


「ゆめは覚えていないかも知れないけど、ゆめのお父さんが亡くなって、お母さんさみしくってね」

「……うん」


記憶の中のお母さんはいつも泣いていて。

ひたすら悲しんで、泣いて、泣いて。

どうにか力になりたいけど、何もできなくて、私まで悲しくなっていたっけ。


「それでおかしくなって、勢いでゆめにそんな事言っちゃったんだろうね」

「……」

「ゆめに、同じ思いをしてほしくなかったのかもしれない。でも、その一言のせいでこんなにゆめを……こんなに……ふふっ」

「わ、笑わないでよ……」


ノートに視線をうつしたお母さんはこらえきれないといったように小刻みに肩を揺らす。


「え、と、じゃあ、折原くんとのことは……」

「実はね、あの子がゆめの彼氏だったらいいなって思ってたの」

「……!!」


久しぶりに、こんなお母さんの笑顔を見た気がする。


「お母さん私ね」

「うん?」

「折原くんのこと、大事にしたい。折原くんに、幸せになって欲しい。そのために私が隣にいて、一緒に幸せになりたい」