無理、俺にして

「俺、なんか買ってくる。母さんプリン食べる?」

「え、嬉しい!! 看護師さんからもプリンオススメされてるの、お願いできる?」

「知ってる。行ってきます」


笑顔で手を振る母さんに、俺も手を振り返して病室を後にした。


「……っ、」


ズッと鼻をすする。


『母さんといるうちは、男らしくいつも通りに』


それが小学生の時に父さんとかわした約束。

現に父さんは、母さんの前ではバカみたいに笑っている。
バカなのは前からだし、なにも変わってなんかいない。


「紫乃、大変だ。母さんがかわいい」

「は、マウント? やる?」

「はっはっは!! 俺とお前じゃ話にならんぜよー!! 悔しかったら母さんからきゅうんポイントをもっと稼ぐことにゃな!!」

「強いと思ったら実はめちゃ弱い中ボスの分際で何言ってんの?」

「え、父さん中ボス? ラスボスじゃなくて……?」


……いつも通り。


「くふ、ふ……ふふっ」


俺と父さんの、漫才みたいなやりとりを見て笑ってくれるのが嬉しくて。
もっと笑って欲しくて。

父さんと一緒に病室に通うのも結構多くなった。