佐野晴空 7月29日
「おいで、晴空」
「ママ!大好き」
「ふふ、私もよ」
母親に抱きつき甘える少年とそれに応える母親。誰の記憶だ?晴空は俺の名前だ。
…俺の記憶。そうだ。小さい頃の俺の記憶。ずっとしまい込んでいた。もう思い出さないように、思い出して泣かないように、記憶に蓋をしていた。
「母さん!!」
「泣かないで晴空。貴方は笑いなさい。最高な私の息子だよ、世界で一番愛してる」
母親はふふ、と小さく微笑みを浮べ、綺麗な顔で永遠の眠りについた。
まただ。これは病院?中学の入学式すぐくらいだろうか。今より背の小さい俺が母さんの手を強く握り泣いていた。ピーという音が静かな部屋に響き渡る。それを聞いた瞬間、中学一年生の俺はその場に崩れ落ちた。
母さんは最後まで綺麗だった。本当に本当に綺麗な人だった。優しくていつでも俺の味方でいてくれた。大丈夫って言ったのに。治るって言ったのに。どうしてだよ!なんで、どうして。なんで逝っちゃったんだよ…。その後の俺の苦しみも知らずに。なぁ知ってた?俺が全部吐き出せるのは小さい頃からずっと母さんだけだったんだよ。
「晴空。まだ来ちゃダメだよ」
「…さん!佐野さん!!……やっと目開けた…大丈夫ですか?!」
鼻をつく匂い。もう二度と嗅ぎたくない匂い。病院だ。俺飛んだはずだよな?なんで此処に居るんだ。なんで死んでないんだよ。
看護師3、4人と医師が近くにいるようだ。
「佐野さんここ4日眠ったままだったんですよ」
白衣を着た優しそうな医師が言う。
「そうですよ〜!ほんと心配したんですからね!何か身体に支障はありませんか?」
続いて看護師。
そうか。死ねなかったのか。こんな世界もう要らない。もう十分なのに。
俺はひと息吸って笑顔を作り言う。
「迷惑かけちゃってすみません。大丈夫です、ありがとうございます」
医師と看護師が“良かった”と安心したのを確認して外を見た。
「今お父さん達来るからね」
看護師がにっこりと笑って声を掛けてきた。
は?
今1番会いたくないのに。そんな事を考えていると勢い良く扉を開ける大きな音が聞こえる。
「晴空!!どうした、大丈夫だったか!?」
「晴空くん!」
「そらー!」
「お兄ちゃん!」
さっきと同じ笑顔で家族を迎えた。
面倒臭い。非常に面倒臭い。早く帰ってくんねぇかな。
その後もめちゃくちゃに心配されたが全て笑顔で返し、“本当に大丈夫か?”と心配しながら帰る父を笑顔で見送った。
看護師達は父と美由紀さん、弟、妹が帰ったのを確認すると、今日から生活する部屋に俺を連れて行った。
「おいで、晴空」
「ママ!大好き」
「ふふ、私もよ」
母親に抱きつき甘える少年とそれに応える母親。誰の記憶だ?晴空は俺の名前だ。
…俺の記憶。そうだ。小さい頃の俺の記憶。ずっとしまい込んでいた。もう思い出さないように、思い出して泣かないように、記憶に蓋をしていた。
「母さん!!」
「泣かないで晴空。貴方は笑いなさい。最高な私の息子だよ、世界で一番愛してる」
母親はふふ、と小さく微笑みを浮べ、綺麗な顔で永遠の眠りについた。
まただ。これは病院?中学の入学式すぐくらいだろうか。今より背の小さい俺が母さんの手を強く握り泣いていた。ピーという音が静かな部屋に響き渡る。それを聞いた瞬間、中学一年生の俺はその場に崩れ落ちた。
母さんは最後まで綺麗だった。本当に本当に綺麗な人だった。優しくていつでも俺の味方でいてくれた。大丈夫って言ったのに。治るって言ったのに。どうしてだよ!なんで、どうして。なんで逝っちゃったんだよ…。その後の俺の苦しみも知らずに。なぁ知ってた?俺が全部吐き出せるのは小さい頃からずっと母さんだけだったんだよ。
「晴空。まだ来ちゃダメだよ」
「…さん!佐野さん!!……やっと目開けた…大丈夫ですか?!」
鼻をつく匂い。もう二度と嗅ぎたくない匂い。病院だ。俺飛んだはずだよな?なんで此処に居るんだ。なんで死んでないんだよ。
看護師3、4人と医師が近くにいるようだ。
「佐野さんここ4日眠ったままだったんですよ」
白衣を着た優しそうな医師が言う。
「そうですよ〜!ほんと心配したんですからね!何か身体に支障はありませんか?」
続いて看護師。
そうか。死ねなかったのか。こんな世界もう要らない。もう十分なのに。
俺はひと息吸って笑顔を作り言う。
「迷惑かけちゃってすみません。大丈夫です、ありがとうございます」
医師と看護師が“良かった”と安心したのを確認して外を見た。
「今お父さん達来るからね」
看護師がにっこりと笑って声を掛けてきた。
は?
今1番会いたくないのに。そんな事を考えていると勢い良く扉を開ける大きな音が聞こえる。
「晴空!!どうした、大丈夫だったか!?」
「晴空くん!」
「そらー!」
「お兄ちゃん!」
さっきと同じ笑顔で家族を迎えた。
面倒臭い。非常に面倒臭い。早く帰ってくんねぇかな。
その後もめちゃくちゃに心配されたが全て笑顔で返し、“本当に大丈夫か?”と心配しながら帰る父を笑顔で見送った。
看護師達は父と美由紀さん、弟、妹が帰ったのを確認すると、今日から生活する部屋に俺を連れて行った。
