「……ちゃん、…姉ちゃん、遅刻するぞ!」
晴日の声で目が覚める。小3から野球チームに入っているからか、声量が大きい。さっきまで夢を見ていた気がしたが、忘れてしまった。
時計を見ると針が7時半を指していた。ベッドからおり、急ぎめに制服に着替えてからリビングへ向かった。
ドアを開けると、父が飲むコーヒーの匂いが鼻をツンと刺激する。
「おはよう。もか。朝ごはんは?」
母がキッチンの隙間から声をかけてくる。
「おはよう。お父さん、お母さん。時間ないからコンビニで買っていく」
あと10分で出ないと学校に遅れてしまう時間だった。教科書を乱暴にバッグに詰め、母親譲りの色素が抜けた茶色の髪をとかして家を出た。