わたしはさっそく来栖先輩と放課後に会うことにした。

真面目な感じと若葉が言っていた通り、来栖先輩は見た目もきっちりしていた。

シャツのボタンはすべて閉めていて、髪は一本の乱れもなく分けられている。

黒ぶちの眼鏡をかけているけど、それも野暮ったいというよりは理知的な印象があった。

「それにしても驚いたよ。突然会いたいって言われたときは。彼氏がいると聞いていたから、どうせ無理だと思っていたんだ」

若葉を介して廊下で来栖先輩と会ったとき、わたしはさほど緊張はしていなかった。

すでにいろいろと割り切っていたから、相手がどんな人でも冷静に対応できる自信があった。

ただ、来栖先輩の印象は決して悪くはなかった。

はじめまして、と挨拶したときはしっかりと頭を下げて、しゃべり方は落ち着いたもの。

全体的に柔らかさがあって、先輩としての威圧感はまったくなかった。