「ま、まあね」

このときだけは若葉の目を見ることはできなかった。


「わかった。そのときにリハビリとかに莉子が協力してあげたんでしょ。それで橘くんは莉子のことを好きになった、違う?」

「そんな感じ。わたしとしては苦しんでいる幼なじみを支えてあげたいという気持ちが強かったんだけれど、海斗くんは必ずしもそう受け止めたわけじゃなくて」

「なるほどね。莉子としては罪悪感みたいなものがあって、それで付き合ってはみたものの、さすがにもう限界に来ているってところかな」

「う、うん。それで気持ちを吹っ切るためにも、新しい彼氏との一歩を踏み出したほうがいいのかもと思い始めたところなの」

「そっか。莉子も大変な思いをしていたんだね。わかった、それなら構わないよ。わたしから言っておくから」

疑わしそうな雰囲気は消え、若葉はしっかりとうなずいた。

「ありがとう、若葉」