わたしの親もきっと普通の人だから、そこまで心配する必要はないのかもしれないけど、簡単に割り切れることじゃない。

「誰かと結婚しても、その生活を長く続ける自信がないの。他人を気遣う毎日って、わたしには無理なんだと思う」

「最初は誰でも違和感があるだろ。だから、まずは同棲とかから始めるんじゃないのか。まだ十代の時点で結婚を諦めるって、なんかおかしい気もするが」

「海斗くんには結婚願望、あるんだ」

「あるよ。それが普通だろ」

「じゃあ、わたしは普通じゃないんだね。きっと社会からは外れたところで寂しくひとりで死んでいくんだよ」

「……莉子、やっぱりおまえ、なにかあっただろ」

「うん、あったよ。あったけど、海斗くんにはなにも言えない」

「相談に乗るよ。全部話してくれ」

「そこまで海斗くんには、心を開けていないの。もしなにか打ち明けるなら、別の誰かのほうがいい」

「別の誰かって、誰だよ」

「新しい彼氏、とか」