「……あれ？」

そのまま鏡を見ると、水で濡れているのに、わたしは自分が泣いていることに気づいた。

頬を滑り落ちていくわたしの涙は、顔に張り付いた水を押し退けるようにして顎へとたどり着いた。

「どうして、わたしは泣いているの？」

鏡のなかの自分に問いかける。答えなんて返ってこない。

わたしは指で涙の部分を拭った。

「ーーあ」

その瞬間、わたしは思い出した。

そう、わたしはついさっき死んだのだと。

7月21日、金曜日。終業式の日のこと。

わたしは海斗くんに別れを告げて屋上から飛び降りたということを。

そして再び、一週間、時を遡ったということを。

「え、でも、おかしい」

わたしはある疑問にすぐに気づいた。

そう、わたしは自殺をしたはず。

そうすれば能力は発動せず、すべてが終わるはずだった。