わたしの大声に気づいて、ひとりの生徒がこちらを見上げた。

波紋が広がるように周囲の生徒も次々と顔を上げてこちらへと視線を送ってくる。

「莉子、わかったよ、わかったからこっちに戻ってきてくれ!」

「ずっと黙ってて、とても苦しかった。海斗くんに心の中で謝っていて、でもそれを口にすることはできなかった!」

「別に、おれは怒ってない!お前が悪い訳じゃないことも知ってるって言ってるだろ」

「ありがとう、海斗くんがそう言ってくれるだけでわたしは救われる。あなたの優しさに、わたしは何度も救われたよ」

「莉子」

「これでもう思い残すことはない。全てを終わらせることができる。さよなら、海斗くん」

怖かった。脚がガクガクと震えていた。

何度も死んだから自殺くらい平気だと軽く考えていたけど、自殺というのはまた別の恐怖がある。

涙があふれでてきて、わたしは手で目元を拭った。

その勢いで手すりから両手を離し、空中へと身を投げた。

「莉子!」

滞空時間がやけに長く感じた。

こちらを見上げる生徒の顔がひとりひとり、確認できそうな余裕を感じた。

それでもわたしは海斗くんのほうを見なかった。

これから激突する地面を眺めたまま、わたしはあの日のことを思い浮かべていた。