「そのままだと、優愛さん怒るよね。短いほうが似合ってるって何度も言ってたから」

これはわたしの本音でもある。

くりっとした大きな目に意思の強さを感じるような眉。

顔も小さいから、短髪のほうがいいとわたしは思っているけど、海斗くんは常にある程度の長さを残している。

「他の女子からも言われるよ。坊主が似合う顔だって」

「一度してみたら?」

「坊主は勇気がいるけど、夏休みだったら、一度チャレンジしてみるのもいいかもな。どうせすぐに長くなるだろうし」

それでも、海斗くんは坊主になんかしないと思う。

これは好き嫌いというより、生き様としての髪形だから。

海斗くんはファッションのために髪を長くしているわけじゃない。

常に自分に言い聞かせるため。

鏡を見たとき、自分はそっち側にはいないんだと確認するために、伸ばしている。