本気でそう思っているわけではないことは碓井さんにも伝わったようだった。

「……そうですか。では、気が変わったらその連絡先にご連絡を。できれば数日以内に」

そう言って、碓井さんは車へと戻っていった。

車が完全に見えなくなると、

「なんだったんだ、あれ。本物の官僚なのか?」

海斗くんが首を傾げて言った。

「さあ?詐欺とかかな」

「それはあり得る。最近は妙なことばかり起こっているからな、その不安につけこもうとするやつが現れているのかもしれないよな」

「わたしなんか騙したって、意味ないのにね。麗とかお金持ちを狙うなら、まだわかるけど」

もう親が別れたことは知っているけど。

「もしかしたらさ、あのおじさん、莉子にひとめぼれでもしたのかもしれないぞ。それで近づく口実でも考えたのかもしれない」