いつもはおとなしく観察してるだけのわたしだったけれど、今日の部活では選手を鼓舞するように元気に声を出した。

静かにしているとそのまま死んでまいそうな気がしたから、ことさら元気でいるように心がけた。

「夏だからかな。開放的な気分になっちゃって」

「なにかいいことでもあったのかと思ったよ。宝くじが当たったとか」

悪い宝くじが当たるんだよ、なんて冗談が頭に浮かんでしまい、わたしは頭を振った。

「どうした?」

「なんでもない」

「そうか。でも安心したな。莉子の元気な姿が見れてさ」

「なにそれ。まるでわたしがずっと寝込んでいたみたいな」

「……」

海斗くんは立ち止まって、空を見上げた。

六時を回ったばかりで、夏の空にはまだ明るさが残っていた。