「ーーっ」

声が聞こえた。

真っ暗闇のなか、必死にわたしの名前を呼ぶような、男性の声。

なんだろう。体がとても軽い。

ふわふわといまにも空中に浮いてしまいそうなくらいに。

手足が全部なくなったみたいな感覚。

もしくは、海の上に浮かびながら寝ているような。

とても心地のよい空間だった。

辺りにはなにも見えないのに、楽園にでもいるような気持ちになった。

このままずっとこうして過ごしたかった。

「ーーっ」

また、声。

誰かの熱量がわたしのところに降りかかってくる。

最初はなにも感じなかった。

わたしはその声をずっと無視していた。

遠くから聞こえているうちは、それでも良かった。

けれども、その声はやむことがなく、むしろ大きくなっていった。