覆面の歌姫

「ああ、神様私何か悪いことした?」

病院の屋上で、私の声が空に消えていった。




それから母は、私の視力が戻らないと分かると病室に点字の本や白杖を持ってくるようになった。父親とは私が小さい時に離婚していたから、女手一つで育ててくれた母にはとても感謝していたし、私のせいでまた余計な心配をかけてしまっていることが何より悲しかった。

できるだけ母に元気な姿を見せようと毎日リハビリも頑張ったし、点字の勉強もした。

その中でも一番、私と母を元気にしたのは歌だった。