稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「表情が豊かになったわね。新しいことに気が付かせてくれて、こんなに楽しそうに話をしてくれる。いいお友達ができてよかったわね」
 メイの言葉に、大きく頷く。
 うん。いい友達ができたの。
 本当は、もっともっとエミリーのことを聞いてほしい。
 だけれど……秘密があるから。私たちの関係は秘密だから……。
 自由に会うこともできない。
 悲しくなって、涙がこぼれそうになる。
 だめ。メイに心配をかけてしまう。どうしたのと尋ねられたって、教えられないんだから、心配させるわけにはいかない。
「かわいいのも確かだけれど、やっぱりおいしそうだって思うのも本当よ!じゃぁ、早速いただくわね!」
 務めて明るい声を出し、お菓子を口に運ぶ。メイは、ちょうど飲み頃になったお茶をティーカップに注いでくれた。
「そういえば、花茶をご馳走になったのよ」
 何をしていても思い出すのはエミリーのことばかりだ。
「へぇ、そうなんですね。今度用意いたしましょうか?」
 注がれたばかりの紅茶の表面が揺れているのを見る。
 ゆらゆらと、私の顔が映っている。
 私、一人の顔が映っている。
「……いいえ……必要ないわ……メイがいつも美味しく入れてくれるお茶で満足してるの」
 顔をあげ、メイにお礼を言う。
「いつも、ありがとう」
「どういたしまして」
 一人で飲んでもきっと幸せな気持ちにはならない。
 花茶の開いていく花びらを一緒に見る人がいなければ。
 エイミーと一緒でなければ。
「そういえば……」
 お菓子もすっかり食べ終わり、2杯目のお茶を飲んでいる時には心も落ち着いていた。
 そして、数日すっかりエイミーとの思い出に浸って何も手につかなかったけれど。
 特別に用意してくれたというお菓子に、花茶。
 ハンカチのお礼だと言っていたけれど……。お礼のお礼はおかしいかな?
 お菓子のお礼がしたい。