稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 ああ、やっぱり婚約しようなんて無理だったのかしら。
 二人で会いたいという、もっと会いたいという……そんな理由で。
 ううん。負けない。負けないわ。
 皇太子はやめて、リリーと婚約するの。
 結婚は、のらりくらりと先延ばしにして婚約者として仲良く過ごすわ。
 結婚しちゃうとリリーに色々と厄介ごとが発生するのなんて目に見えてるもの。リリーの家がどの程度の爵位の家なのかまだ確認してはいないけれど……。持参金だのなんだの……。王室とつながりを持つことで実家にすり寄ってくる貴族がいたり。
 きっとろくでもないことが起きるわ。
 もともと皇太子妃として名前が上がるような家柄であればよかったんだろうけど。
 リリーの名前は聞いたことがないもの。
「シェミリオール、王妃に相応しくないのであれば、予が相応しい立場を与えてやろう」
 びくりと体が震える。
 リリーに、誰かの元へ嫁がせるつもり?
 ……王命とあれば、リリーは逆らえない。……男性アレルギーがあるというのに、逆らえずに嫁がされてしまう!
 初めて会った時の、痛々しい手首を思い出す。
 白くて美しい肌が、真っ赤になり腫れあがっていた。
 手をつかまれただけであれほどのアレルギー症状が出てしまう相手のもとに嫁ぎ……もし、世継ぎをと望まれれば……。
「皇太子妃になるのであれば、予は何も言わぬ。多少の問題には目を瞑り、それなりに手を回そう。シェミリオール、お前が皇太子を降りることは何があっても認めぬ。この話はおしまいだ。もう一度、よくその女と話し合うことだな!」
 陛下が……父上が、固い表情のまま背を向けて部屋を出て行く。
「あなた……」
 その後を追おうとした母上が、足を止めて振り返った。