稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 ああ、リリーが私が皇太子だと知ったらどう思うかしら。恐れ多いと逃げ出しちゃわないかしら……。
 早く、皇太子の地位を弟に譲って、それからできれば王子の地位も捨てちゃって、臣籍降下しちゃいましょう。
 そうねぇ、王都からそこそこ離れた小さな領地をもらって、そこで二人で仲良く暮らすの。
 屋敷は男子禁制にするべきね。そして、かわいい物いっぱいで屋敷を飾って……。
 ああ、なんて素敵なのかしら。
 さて、ここから交渉ね。
 気を引き締めて。なるはや!なるはやで、弟に皇太子の位を譲る。
 なるはやで、リリーと婚約するの。
 ああ、次に会うときには婚約する準備が整ったって言いたいわ!

「父上、母上……、いいえ、陛下、王妃殿下にお願いがございます」
 食事の席で話をするものではないと時間を取ってもらった。
 もちろん、弟にも同席してもらっている。
「なんだ、改まって」
 父上は、随分と疲れた顔をしている。
「……来年、弟も成人を迎えます。皇太子の地位を弟に渡したいのです」
「兄上っ!」
 一番に声を上げたのは弟だ。
 自分には無理ですと、兄上が王になるべきですと、いつも言っている弟だ。
「また、その話か……」
 父上は眉間によったシワを指で押さえた。
「本気です。今回は、譲れません」
 強い口調でさらに続けると、母上がため息をつく。
「シェミリオール、結婚するつもりはない、だから世継ぎを残せないから……と貴方は言いますね。その点に関しては話し合ったでしょう?生涯独身であった王も過去にいます。世継ぎならば、弟の息子……お前の甥に継がせるようにすればよいと」