稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「殿下、記憶も戻ったことを陛下に早く報告をした方がいいでしょう。ローレル嬢も、そのために尽力してくださったのだ。疲れたでしょう。リリーも、宰相である父上と今後のことを相談した方がいい。それでは、殿下、失礼いたしますっ」
 兄がさっさと話をまとめてその場を去ろうとしたところ、エミリーがさっと膝をついた。
 そして、私の手を取る。
「さ、触るな、リリーは」
 お兄様は私がシェミリオール殿下に触れられてアレルギーが出ることを心配してくれて止めようとしてくれているんだ。

「お兄様、大丈夫です」
 お兄様の目を見る。
「そうか……軽いんだな?」
 アレルギーが軽いなら少しの間なら大丈夫だと兄は解釈したようだ。
「リリーシャンヌ、どうか、私と結婚してほしい」
 手を取ったエミリーが皆の前で私にプロポーズの言葉を口にした。
 お兄様とローレル様は少しだけ私たちから距離をとって見守ってくれている。
 始めは断ろうと思った。
 それから覚悟を決めて受けようと思って。
 この会場には諦めようと思って来た。
 そして、今は……。
「はい……喜んで……」
 エミリーがいない人生なんて考えたくないっ。
 記憶を失って、エミリーが死んじゃったと思ったあの悲しみを味わったからこそ。
 エミリーが生きてたんだもの。もう、ぜったい、自分からエミリーから離れようなんて思わないっ!
 正直、私に皇太子妃が務まるのかとか、王妃に相応しいのかとか色々と考えてしまうけれど……。
「リリー!」
 シェミリオール殿下が私の手の甲にキスを落とすと、立ち上がって私を抱きしめた。
 耳元でエミリーの言葉が聞こえる。
「嬉しいわリリー。ごめんなさいね、記憶を失っていてずいぶん迷惑をかけちゃったわね……私が好きなのはずっとリリーだけよ」
 私だけに聞こえる、シェミリオール殿下ではないエミリーの言葉。