稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「殿下、いくら殿下と言えどもリリーに触れないでいただきたいっ!」
 リリーに抱きしめてもらえると思ったら、お兄様が殿下を止めた。
「ロバート、お前の妹馬鹿の話は噂では聞いているが、ここまでとは!不敬だと処罰されたいのか!」
「殿下ともあろうものが、人前で婚約者でもない女性を抱きしめるなどというみだらな行為を犯すようなことはないですよね?」
「み、みだら……っ」
 ハッとして、シェミリオール殿下が私を見た。
「リリー、今日のドレスははじめて会った日に着ていたものと同じ色だね」
 ポロリと涙が落ちる。
 初めて会った日に着ていたドレスの色を……シェミリオール殿下が知っているわけない。
 知っているのは……エミリーだ。
 心が女のエミリーだ。
「記憶が……」
「ああ、全て記憶を取り戻した。皆の者にも心配をかけた。すまない。記憶を失っていた時の記憶もある。私の記憶を取り戻そうと色々と尽力してくれたものにはお礼を言う。そして、私の愛する者を探そうとしてくれた者たちにもお礼を。私を騙そうとした者たち……その多くは「もしかしたらうちの娘かもしれない」という程度で騙そうとまではしていなかったのは明白。その中で明らかに違うと分かっていながら自分だと言った者には王家を陥れようとした罪が問われるかもしれないので、追って事情を聞かせてもらうことになると思う」
 エカテリーゼ様ががくがくと震え、ふらりと後ろに倒れかかかかったところを、2人の衛兵が支えて会場の外へと連れだした。
 エミリーがローレル様を見た。
「ち、違うわ。ローレル様は、自分ですってひとことも言ってない……だ、騙そうとなんてしていませんっ」
 ローレル様を庇うようにローレル様の前に出る。
「確かに。あの会話のどこにも自分だという主張はしていなかった」
 エミリーの言葉にほっと息を吐きだす。