稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 エカテリーゼ様がコサージュを手にしたまま、1歩、2歩と踏み出し、殿下とエカテリーゼ様の立つ場所の正面に立った。
「確かめよ!」
 声を上げたのは、ロイホール公爵だ。
 指示を受けた者が、ローレル様の手にもっていたブーケを受け取り、殿下の胸元のブーケと比べ始めた。
「ローレル様のブーケ・ド・コサージュは本物ですっ!」
 確認していた従者が声を上げたことで、会場からわっと声が上がった。
「私は、エカテリーゼ様と違って、イニシャルがRですわ。聡明な皆様にはこの事実をどうお考えになられますか?」
 ローレル様は、自分が殿下の探していた人間だとはひとことも言わない。
 会場の人々が忙しく噂話をする。
「ほっとしましたわ。エカテリーゼ様が皇太子になったらどうなることかと」
「エカテリーゼ様は、王室をだましたということ?処罰されるのかしら?」
「でも、Rのイニシャルを持つ多くのご令嬢がお城に私のことではと名乗りを上げたのでしょう?」
「全員を処罰の対象にはできませんね」
「では、おとがめなし?」
「まぁお咎めはなくとも、これだけの騒ぎを起こしたのですから、嫁の貰い手はもうなくなるのでは?」
「ローレル様が真の殿下の思い人?」
 エカテリーゼ様が顔色を悪くしている。
 だけれど、決して逃げていくようなことはない。
「お、おかしいでしょう?ローレル様は、家柄的にも、私のように婚約者がいたわけでもないのに……殿下が隠す理由は一つも、そう、一つも陰で愛をはぐくみ、あまつさえ皇太子の地位を返上してまで愛を貫くなんてことをしなくても良いはずです。婚約者がいた私こそが、本物だという証拠ですわ!」
 エカテリーゼ様の言葉に、会場に集まった皆が周りの人の顔を見ながら話をしている。
「そう言われれば確かに」
「皇太子をやめてまで一緒になりたいというならエカテリーゼ様のような気もするな」