稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 様々な声が耳に届く。
 そのどれもが、彼女がシェミリオール殿下の思い人だということを否定することはない。
「エカテリーゼ様、ハンカチのイニシャルのRがそうだとしても、あなたが皇太子殿下の思い人だという証拠はどこにあるのですか?」
 エカテリーゼ様が頭を殿下の肩にコテンと載せ、真っ赤な口でにたりと笑う。
「聞いていらっしゃらなかったの?殿下が大切に持っていた、ブーケ・ド・コサージュの話を」
 と、エカテリーゼ様が殿下が胸元に飾っていたオレンジの小さなブーケを指さした。
 そうしてから、殿下に絡めていた腕を離すと、ドレスの胸元の中央を飾るブーケ・ド・コサージュを見せつける。
「私の、ブーケ・ド・コサージュと殿下のブーケ・ド・コサージュが対になっていると証明されたのよ。間違いなく同じ布で作られた物だとね」
 エカテリーゼ様がホホホと笑っている。
「動かぬ証拠だな」
「私ですって名乗り出た人の大半がオレンジ色のブーケ・ド・コサージュを持参したそうよ」
「聞いたわ。だけれど、布が違うものだったのでしょう?」
「どのような布かは公表されてなかったんですもの。取り寄せることもできないはずだから、エカテリーゼ様が殿下の秘密の恋人だったというのは本当なのね」
 お兄様が拳を握りしめた。
「そのブーケ・ド・コサージュは、私があげたものじゃないか」
 悔しそうに言葉を発する。大きな声で主張しないのは、それを言うことで、私が表に出ないように気を使ってくれたのだろう。
 殿下は、そんなやりとりをただ黙って見ている。
 無表情のまま。まるで他人事のように見ていた。

 そんなお兄様の背をローレル様が軽くたたき、そして私が先ほど差し上げると言ったブーケ・ド・コサージュを手に載せて見せた。
「殿下、彼女は偽物ですわ。Rのハンカチの話は作話でしょう」