稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 会場に入ると、注目を浴びることを覚悟していたけれど誰も出入り口に視線を向けてはいなかった。会場の奥に設置された主催者や賓客が挨拶をする為に少し高くなった場所に目を向けている。
「あ」
 すぐに皆の視線が何に注がれているのが分かった。
 オレンジ色の鮮やかな髪が見える。
 エミリー……いいえ、シェミリオール殿下だ……。
 手が震える。
「近くまで、行きましょう」
 ローレル様がすぐに私の手をぎゅっと握って会場の奥へと引っ張っていく。その斜め後ろをお兄様もついてくる。
 みっちり固まるようにして壇上を見ていた人たちは、私たちの姿を見てすぐに場所を開け前に進ませてくれた。
 当然、貴族にはそれぞれ暗黙の了解で決められた立ち位置がある。
 上位貴族が前、下位貴族が後ろだ。
 人々が割れると、オレンジ色の頭だけが見えていたシェミリオール殿下の姿がはっきりと見えるようになった。
 そして、その隣……殿下の腕に絡みついているオレンジ色のドレス姿の女性がいることにも気が付いた。
「エ、エカテリーゼ……」
 お兄様が、その女性の顔を見るなり驚愕の声を上げる。
 殿下の腕に体を密着させて腕を組んでいたオレンジ色のドレスの女性はエカテリーゼ様だった。
「あら、ロバート様ごきげんよう」
 にたりとエカテリーゼ様が笑う。
「どういうことだ?」
 お兄様の声に、エカテリーゼ様が勝ち誇ったように片側の口の端を上げた。
「どういうことですって?ふふふ、それは、私が殿下の思い人だって皆にバレて、婚約するという話のことかしら?」
 エカテリーゼ様が殿下と婚約?
「ありえないわ」
 ローレル様が口をはさんだ。
「あなたのイニシャルはEでしょう?Rではなかったはずよ?」
 ローレル様の言葉に、エカテリーゼ様がふんっと鼻を鳴らす。