稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「殿下は私のことを全く覚えていなかった……私を見ても、何も思い出した様子もなかった……」
 泣きそうな顔をした私をローレル様が引き寄せてくれた。
「リリーシャンヌ様……この、手紙の続き……あちらが忘れたからじゃない……リリーシャンヌ様が決断して断った未来に戻るだけ……」
 ローレル様が私の手に、書きかけた手紙を当てた。

 そうだ。一度は断ろうと思ったのだから。ちょっと断らなくてもいいかなと思ったけれど、やっぱり断ることにした……そんな未来にいるだけ。
 そんなに簡単に気持ちは軽くはならないけれど、ローレル様が私を慰めようとしてくれているのが分かって、少しだけ気持ちが軽くなる。
 きっと、私が悲しんでいれば、ぎゅっと抱きしめてくれる。
 悩んでいれば話を聞いてくれる。
 男性アレルギーのことも話をしたし……。
「さぁ、着替えて。行きましょう!ロバート様もすぐに準備を!」
 ローレル様の言葉に、お兄様がきょとんとした顔を見せる。
「私も?あ、そうか。ロイホール公爵邸のお見合いパーティーはエスコートなしでもいいとはいえ、そうだな。エスコートしていった方がいいだろう」
 というお兄様の言葉に、ローレル様が小さな声で呟いた。
「当事者だもの。見届けてもらわないと」
 当事者?
 シェミリオール殿下の思い人の私の兄という立場だから?まぁ、関係者ではある。ローレル様とお兄様が一緒にいてくださるなら……。私も心強い。
 お兄様が出ていくと、代わりに侍女たちが部屋に入って来た。
「さぁ、誰よりも美しくして頂戴!」
 ローレル様がクローゼットを開いた侍女に声をかける。
「え?いや、あの、あまり目立たないように……」
 もしかしたら、泣いてしまうかもしれない。あまり注目を浴びたくはない。
「それは無理だわ……」
 ローレル様がクローゼットの中を眺めながらちょっと困った声を出した。