稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 ローレル様がドレスのポケットからしわだらけの紙を取り出した。
 すぐに、その紙が私が皇太子妃にはなれないと。プロポーズを断る返事を書きかけて捨てた紙だと気が付いた。
「それでも、その後に馬車で言ったわよね?皇太子妃になるって。殿下のプロポーズを受けるつもりだったんでしょう?」
 ローレル様の言葉に、お兄様が慌てた。
「ど、どういうことだリリー!殿下のプロポーズって?お前たち、一体……ああ、待てよ、待て……」
 混乱するお兄様が、私の目を見た。
「殿下は、リリーのアレルギーのことを知っているんだな?」
 兄の質問に素直に頷く。
 兄はそれを見て、右手で前髪を書き上げた。
「そういうことか。……殿下が皇太子の地位を弟に譲ろうとあれほど躍起になっていたのは……リリー、お前を皇太子妃……いや、王妃にしないようにと……考えてのことだったのか……それほどまでに愛されているんだな?」
 違う。
 私はエミリーのことが大好きだけれど、エミリーは私のことを愛しては……いない。
 お互いの利害が一致したから婚約をしようと言われただけで……エミリーがいなくなった今、利害なんてもう……。シェミリオール殿下にメリットなんて何もないよ。

「一番の問題は世継ぎのことだろう。側室を持ってもらうか、それがお互いに耐えられなくても、何も子供が継がなければならないなんてことはないんだ。立派に国を治め、次に王弟なり王弟の息子……甥なりに位を譲れば問題ないんだよ」
 私が沈んだ顔を見せたからか、兄が慰めるように言葉を発する。
「行きましょう!リリーシェンヌ様っ!このままじゃ、殿下はあの女と婚約してしまうっ」
 あの女?
「でも、私のことを忘れてしまったなら……別の人が皇太子妃になった方が……」
 ローレル様が私の両肩をつかんだ。