稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 ローレル様が目を吊り上げてお兄様に言い返した。
「何故、私が?Rがつくからそう思われましたの?冗談じゃありませんわ。私は嘘をつき、誰かを押しのけてまで皇太子妃になるような女に見えるというのですか?」
 あまりの剣幕にお兄様が、青い顔を見せる。
「いや、すまない。そういうことではなく……もしこのまま見つからなければ誰かと婚約してもらわなければと父が……そこで、その、ローレル嬢は素晴らしい女性だから皇太子妃に相応しだろうという話が出たので……その……」
 お兄様の言葉を聞いてローレル様は兄に詰め寄った。
「私を褒めてくださるのは嬉しいですが、ロバート様も宰相閣下も、何を言っているか分かりません」
 上位貴族として普段は感情を隠した顔を見せなければならないのに、今のローレル様は怒りをはっきりと見せている。
「私よりもずっとふさわしい、素敵な女性がいるではないですか、何故、何故あなた方は……リリーシェンヌ様を皇太子妃にと言わないのですか?」
 え?
 ローレル様の言葉に、すぐにお兄様は答えた。
「いや、妹は……問題があって……とても皇太子妃が務まらない」
 パシンと、すぐに乾いた音が部屋に響いた。
 ローレル様がお兄様の頬を叩いた音だ。
「酷いっ!妹に問題があるだなんて。よくもそんなことをおっしゃいますね?リリーシェンヌ様はとても可愛らしい人で、人のことを思いやることもできるし、それに……」
 ローレル様が怒りのあまり……いいえ、私のことを思って涙を流してくださっている。
「いや、その……」
 お兄様が打たれた頬に軽く手を添えながら、ちらりと私の顔を見た。
 男性恐怖症のことを話すわけにはいかないと気を使ってくれているのだ。
 私は、小さく唾を飲み込むと、ローレル様の前に立った。