稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 盲目になるほど、私が愛されていたわけでは……。女同士の友情がそこにあっただけで……。

 胸が苦しい。
 私はエミリーが女だとか男だとかそんなことどうでもよくて、ただ、一緒にいられる時間がとても好きで、幸せで。
 ずっと一緒にいたかった。
 思わず大きな声を出してしまった私に、お父様とお兄様の目が向いた。
「も、盲目になっているわけでは……ないと、思うんです……」
 何か発しなければと、適当な言葉を口にする。
「では、弱みでも握られているのか?それはまた問題だな」
 お父様がうーんと眉根を寄せる。
 え?弱みを?それも違う、違うけれど……。もし、心が女であるということが誰かにバレて、それで脅されたりということはこれから先も無いわけではない……のかな?
 いや、でも脅すなら皇太子の地位を捨てさせて得をする人なんて第二王子しか……。
「まぁ、とにかくだ。殿下が何も思い出さないのであれば、それはそれで構わない」
 お父様が衝撃的なことを口にした。
「……というのが、陛下との話し合いで出た。いつか記憶が戻るかもしれないと期待して、色々なことを後回しにすべきではないと。むしろ、記憶はこのまま戻らないということを前提で色々なことをすすめるべきなのではないかと」
 記憶が……戻らない。
 そうかもしれないと思っていたけれど。エミリーは消えてなくなってしまったんだと思ったけれど。こうして人の口から言葉を聞くと、心が酷く締め付けられる。
「そこでだ。ろくでもない自称婚約者があらわれる前に、婚約をしていただくかということになった」
 お父様の言葉に、お兄様が椅子から立ち上がった。
「まさか、それが、ローレル嬢!」
「ああ、そうだ。最有力候補だ」
 ローレル様が、シェミリオール殿下の婚約者に?
 うそ……。
 お兄様が、ふらりと腰を下ろす。