稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 男性アレルギーのある私よりも、ずっとふさわしい人が……。
 ああ、涙がこぼれ落ちそうだ。
 もし、エミリーが生きていれば……。私の前ではエミリーでいていいのよ?と。シェミリオール殿下の支えになりたい。
 だけれど、エミリーが消滅してしまったならば……ならば……。私は邪魔にしかならない存在だ。
「ここに、シェミリオールが大切にしていた品がある。きっと、その女性から送られたものだと思う」
 陛下の後ろに、侍従の一人が立派な銀の盆に載せて小物を運んできた。
「あ……」
 小さな声が漏れる。

 陛下が、盆の上に載った一つの品を手に取る。
「これは、今、皆の間で流行っているブーケ・ド・コサージュと言うものであろう?女性側が主にドレスにつけるものだが、好きな男性にお揃いのブーケ・ド・コサージュを送るという話を聞いた」
 私がエミリーにあげたオレンジ色のブーケ・ド・コサージュが陛下の手にあった。
 ああ、エミリーは大切にしてくれていたのね。
 ザワザワと会場が周りの人間に視線を向ける。
 どこにいるのか。誰なのかとドレスに飾れれているブーケ・ド・コサージュを探す。
「皇太子殿下が女性と会えるような機会は一体どこにあったんだ?」
「いつも護衛が付いているのに、相手の女性が誰か分からないなんてあるのか?」
「護衛が距離を取る場といえば王宮内など全体の警備がしっかりなされている場所?じゃぁ、まさか相手は王宮の使用人という可能性が」
「それは確かに……許されないと思う相手だろう」
「王妃様の身の回りの世話をする侍女であれば貴族のご令嬢だから問題ないのでは?」
 色々と皆の噂が耳に入る。
「そういえば、公爵家で催されていた舞踏会に足を運んでいただろう?そこで出会ったのでは?」
 どきりと心臓がドキリと音を立てる。