稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 生きて、怪我もせず帰ってきたことを考えれば……悲しいけど、仕方がなかったのだと諦めもつく。
 でも、エミリーが消滅してしまったんじゃないかっていう考えで、心臓がぎゅーっと押しつぶされる。
 エミリーは生きているの?ちゃんと、シェミリオールの中にいる?
 ああ、でも、でも、もし、女の心の部分のエミリーがシェミリオール殿下の中で消滅したのであれば……。
 それは、殿下にとっては不幸なことではないのだろう。
 心が女であることで、それが許されない環境で、苦しんでいたことが無くなるのだ。
 記憶は失ってもこれから覚えていけばいい。エミリー……いいえ、シェミリオール殿下は今の方が幸せなのかもしれない。
 だとしたら私は?
「記憶は失ってしまったが……皇太子の地位を捨ててでも一緒になりたいと愛していたのだ。どうか側に寄り添って欲しい。我が息子の愛する女性よ、名乗り出よ」
 陛下の言葉に顔を上げてシェミリオール殿下の顔を見る。
 男女の愛は無かった。女同士の友情だ。
 その女であったエミリーがいないのであれば……。これから愛する人をシェミリオール殿下は見つければいいのでは?
 それは私じゃない……。男性アレルギーのある私よりも、もっと王妃として相応しい人がいつかあらわれるのでは?
 今の方が幸せならば、私はいない方がいい……。
 誰だ?
 誰なんだ?
 何故名乗り出ないんだ?
 と、会場にいる者たちが誰だろうとキョロキョロと視線を動かす。
 もしかしたら、会場に来ていないのでは?という話も出始めた。
「……息子は、多くの女性に声をかけるような男ではなかったと、私は信じているが。……もしかしたら、私の他にも誰かいたのではと思っておるのか?それともまだプロポーズをしていなかったのか?」
 陛下がうむと頷いた。
 ……名乗り出ないほうが、シェミリオール殿下はきっと幸せになれる。