稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「あ、ああ。本当に大丈夫か?少しでも気分が悪くなったらすぐに言うんだよ?」
「ありがとうございます。……ですが、お兄様こそ、その……」
 エカテリーゼ様と婚約を解消したばかりで……。と、口にしようとしたけれど。
 思い出させて傷を広げるようなことにもなりかねないので、触れない方がいいのだろうと、口をつぐんだ。

 会場に戻ると、まだ壇上では挨拶の列が続いていた。
 通常、上位貴族のみ直接挨拶をするというから、公爵に続いて辺境伯、侯爵、伯爵家までだろうか。
「リリー様!すごいわ!魔法を使ったの?」
 会場に戻ると私の姿を見つけてローレル様が声をかけてくれた。
「ご無沙汰しておりますロバート様。少しリリーシャンヌ様とお話させていただいても?」
 ローレル様がハッとしてお兄様に美しい仕草でお辞儀をしてほほ笑んだ。
「くすくす。ええ、もちろん。仲良くしてくださって嬉しいですよ。私はここにいても構わないかい?女性同士の話であれば飲み物でもとりに行ってくるけれど」
 お兄様が聞かれてまずい話をするようならどっかに行ってるよと気を使ってローレル様と私に問いかけた。
「いいえ、今日は珍しくリリーシャンヌ様のおそばにずっといてくださるようですから、飲み物は必要ありませんわ」
 ローレル様がややとげのある声音でお兄様ににっこりとほほ笑んだ。
「ああ、いや……はは」
 ばつの悪そうな顔でお兄様が乾いた笑いを漏らす。
「ああ、ごめんなさい。リリー様から事情は聞いていますから。公爵令嬢だと知られないように距離を置いていたのですわね……。先ほどのその……あの方との会話も聞こえてしまいましたが。誠実に努力をしていたゆえの、行いだったのですね……誤解しておりましたわ」
 誤解?
 あの方ってエカテリーゼ様との会話っていうことだよね。ローレル様も見ていたんだ。