稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 エミリーという人格が死んでしまって……姿は同じなのに、中身は別の人にすり替わってしまったのかもしれない。
 泣きそう。でも、その感情は胸の奥にしまい、笑顔でなんとか2つ3つ言葉を交わして次の人に挨拶の場を譲る。
 壇上を降り、泣きたいのを我慢してお兄様に話しかける。
「お兄様、例の……」
「ああ、行こうか」
 お兄様が私をエスコートして……といっても、腕を組めば軽いアレルギーが出てしまうので並んで会場を後にする。
 あらかじめ準備をされていた控室に入って表情を崩す。
「リリーシャンヌ……大丈夫かい?無理しているようならここで休んでいればいいよ」
 お兄様の言葉に首を横に振る。
 せっかくエミリーと久しぶりに会えたんだもの……。
 エミリーが死んだなんて気のせい。それを確かめないと。きっと、私以上に高貴な身なのだもの。
 完璧に表情を隠す訓練を積んでいる……それだけのことだわ。
 というより……。エミリーを隠し通すために、人一倍感情を隠すことが得意……なのでは?
 ええ、そうよ。そうに違いないわ。エミリーが表に出てこないように、完璧に感情を抑え込む。
 特に気持ちが激しく動くような場面ではさらに気を引き締めて目の動きまでコントロールしている……。
 きっと、そうだわ!
 だって、私と会ってあんなに表情を動かさない方がむしろ難しいわよね?
 だってよ、嬉しいって感情も見えなかったけれど、もし嫌われてしまっていたとしたら、嫌いって色や気まずいっていう感じが目に出るよね。そういうのさえなかったんだから。
 うん。きっとそうよ。そうに違いない。
 と、私が考え込んでいる間に、侍女たちが真っ白だったドレスに華やかなオレンジ色のレースやブーケ・ド・コサージュをとりつけて、まるっきり別のドレスのように飾り立ててくれた。
「お兄様、準備ができましたわ」