稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 他に好きな人が出来たというよりも、秘密を隠すためという目的じゃなくて、心から好きで結婚したいと思う女性が……いやもしかしたら男性かもしれないけど、そういう人が出来ることだってある。
 だから、婚約の話は、無かったことにしてくれと……。
 あれ?別に、それでも会えるなら構わないんじゃないの?
 何で私、こんなに……婚約できなかったらどうしようなんて思っているのかしら。
 だって、もう会えないなんて嫌だから。
 だって、私……エミリーのことが大好きで……。一緒にいるのが楽しくて。
「今日は祝いの席に出てくれてありがとう」
「あ、はい。あの」
 エミリーが私に話しかけている。
 いいや、”シェミリオール殿下”が公爵令嬢のリリーシャンヌに言葉をかけてくださっている。

 緊張して上手く言葉が出てこない。
「普段、こういった場には姿を見せないと聞いている幻のご令嬢が、私のためになれない場に出てきてくれたのだね。楽しんで行って」
 ”シェミリオール殿下”はその瞳に何の感情も映さず、笑顔を浮かべている。
 作った表情。
 皆に同じように言葉をかけるために、訓練して作った表情だ。
 私も、社交の場に出ることはあまりなかったけれど、訓練だけはしていた。
 よほどひどいアレルギーが出てしまうときはどうにもならないけれど、少し気分が悪くなったくらいでは表情に出ないように。
 怒った時悲しい時、感情を隠して作り笑顔を張り付けるように……と。貴族としてはあいてに胸の内を知られることで諍いやあらぬ憶測などを生まないようにと教えられる話だけれど。