稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 私は知ってる。初めて会った時、私を心配して助けようとしてくれたこと。
 私だけが知ってる。本当は可愛い物が大好きで、人懐っこくてよく笑うこと。
 好き。
 エミリー。
 いつものエミリーが好き。

 今のシェミリオールの仮面をかぶっているカッコいい精悍な姿のエミリーも素敵だけど。
 眉根を寄せながら必死に刺繍糸を針に通そうと苦戦しているエミリーとか、初めて刺繍でイニシャルを刺しきって嬉しそうに笑ったエミリーとか。大好き。
 何もかも、エミリーのすべてが好き。
 エミリーは皆の顔を平等に眺めるよう、誰かのところで視線を止めないように会場に視線を配っている。
 私を見て。
 ねぇ、エミリー。エミリーの好きなフワフワで可愛いドレスよ。
 ああ、早く二人きりになりたい。2人きりになれば、きっといつものエミリーの笑顔を見せてくれるんだよね。
「まぁ、なんて素敵なの!本当に天使みたい。可愛い。白いドレスがこんなに素敵で可愛らしいだなんて!しかも、ブーケドコサージュで何通りもの可愛いドレスを簡単に作り出すことができるなんて!リリーすごいわ!」
 頬を染めてドレスを見るエミリーを想像する。
 ああ。今日は二人で会えるだろうか。王宮では無理かな。いつもの噴水もないし。
 でも、……私が公爵令嬢だと分かったのであれば、むしろ理由をつけて堂々とどこかで会える?
 2人きりは流石に無理だろうけれど……。この人が多く集まっている会場とは違う別の部屋で会える?
 お父様に婚約したいということを伝えて、2人で会えるように協力してもらう?待って、お父様に話が行くなら、両陛下の耳にも入るだろうから、2人で会ってる場合じゃなくなる?
 もしかして、今日、この会場で……。
「今日はもう一つ喜ばしい報告がある。皇太子シェミリオールと、公爵令嬢リリーシャンヌの婚約が決まった」