稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 って、馬鹿な質問をしてしまった。直接関係がなくとも、まともな貴族であれば公爵令息のことを知らないわけがない。
「……エカテリーゼ様と婚約されていらっしゃいますわよね」
 そうよね、そういうことも当然ご存知よね。
「リリー様がいらっしゃった舞踏会でもお2人でいるところを見ましたわ」
 確かに、あの場にいたのなら見かけることもあります。
 ……それにしても、なぜエカテリーゼ様は、こんな声に怒りがにじんでいるのだろうか。
「あの、お兄様が、なにか失礼なことを……?」
 お兄様が、失礼を働くとは思えない。あの、伯爵令息のなんたらとか、女性を軽率に扱うような真似をするわけはない。
 爵位を鼻にかけて、我儘にふるまうようなこともない。むしろ、周りに気を使いすぎて押しが弱いような兄だ。
「いいえ。何もされていませんわ」
 何もされていないと言う割には、なんだか、さらに不愉快な表情になった。
「あの、違っていたらごめんなさい。ローレル様は兄のことをよく思われていないのでしょうか?」
 私の言葉に、ふぅーっと、深いため息を漏らした。
「……ごめんなさい。リリー様にとってはお兄様ですものね。不快な表情を見せてしまって……」
 ああ、やっぱりお兄様に対していい気持ちを持っていない?
「ねぇ、リリー様。その手紙に、ロバート様が早く帰ってこいと強要するようなことが書いてあって、無理に戻ることを決意したのではなくて?もし、ロバート様に逆らえなくて体調がまだ戻っていないのに無理しようとしているのなら、私は許さないわ」
 お兄様が、私に早く帰れと命令した?
 私がお兄様に逆らえずに王都に帰ろうとしている?

 あ!そうか。
 さっきまで体調が悪いような……エミリーのことが心配で顔色もさえなかっただろうに、手紙を受け取ったとたんに王都に戻ろうなんて。
 手紙に何かあったのはバレバレ。