稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 お兄様と結婚すれば、義姉……いくら、姉ができるからといっても……。
 ああ、ローレル様がお兄様と結婚すればよかったのに。お兄様が幸せならば、誰が義姉になっても不満はないと思っていたけれど。
 知ってしまった。
 ローレル様のように、お姉様になってほしい人がいると……。
 

「リリーシャンヌ様、お手紙が届きましたわ」
 侍女がドアをノックする音で、ローレル様から体を離す。
「て、手紙?」
「はい、公爵様からです」
 すぐにドアを開いて手紙を受け取る。
 ローレル様や侍女は気を使って私から距離を開けた。暗号で書かれているならば、もし、少し覗かれたからと言って内容を知られるものではないとはいえ、見ないように気遣いを自然としてくれる二人に感謝しながら、手紙をその場で開いた。
「あ……」
 手紙は2枚入っていた。
 1枚目には暗号もなくそのまま誰にでも読める形だ。
『リリーへ 早く帰っておいで』
 ただ、それだけの文章。
 ポロリと止まっていた涙が堕ちる。
 帰っておいでということは、王都に戻っては駄目だという内容だった前回の手紙と反対の内容。
 つまり、もう、王都に戻れるようになったっていうことだ。
 皇太子殿下が誘拐されたことが解決したということだ。戦争の火種がなくなり、王都に戻っても安全だということだろう。
 2枚目に目を通す。暗号……ではなかった。兄からの手紙だ。
『リリー、今まですまなかった』
 はい?
 お兄様が私に何を謝ると言うの?
 お兄様にはいつもよくしていただいていると思うのだけど……。
『次の舞踏会は、リリーさえ許してくれれば、私にエスコートさせてくれないか?』
 え?
 どういうこと?
 公爵令嬢だとバレないように、お兄様とは距離を置いてもらうという話だった。だけれど……。
 皇太子妃になろうと思った。
 エミリーと婚約しようと決意した。