稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 5か国語を覚えている私ならば、人の助けも辞書も必要なく読むことができる。しかもフェイクで、我が国の言葉で全く違うことが書かれている。言葉を知らない人が見れば全く意味が分からないだろう。
『王都に戻るな』
 王都に、戻るな?
『殿下が攫われた。敵国の要求不明』
 ポロリと、手紙が手から落ちる。
 殿下が、攫われた?
 敵国の手に落ちたということ?
 エミリーが……。
 エミリーが?どういうことなの?
 王都に、戻るな?
 それは王都が危険にさらされる可能性があるということ?
 エミリーを盾に敵国が何か要求するの?ならば、まだエミリーは生きてる?
 がくがくと震える手で、落ちた手紙を拾い上げる。
 全然頭に入らない、でも、皆の安全のためにも……。お父様から受け取った暗号で書かれた手紙を水で溶かした。それから……。
「ごめんなさい、気分がすぐれないので、今日は宿で休ませていただいても……」
 王都行きを阻止する。
★★エミリーサイド★★
「あはははっ、勝ったと思って油断するからこうなるんだ!」
 油断。そうだ、確かに油断していた。
 いいや、違う。油断ではなく浮かれていた。
 王都に帰ったら、リリーと会える。
 戦争を勝利に導いたとして、父に……いいや、陛下に一つ望みをかなえてもらえる。
 だから、自ら進んで戦争に行くと言ったのだ。
 望み……それは皇太子の地位を降りること。幸いに優秀な弟が僕にいる。
 皇太子の座から降り、なんなら王族からも抜け、適当な爵位を貰って、ただの貴族の一人として……。
 リリーと二人で幸せに暮らすことを想像して、浮かれていた。
 まさか、味方に敵が紛れ込んでいたとは。
 両手両足を縛られ、どこかに運ばれた。
「交渉が終わるまでここに入ってろ!」
 廃屋だろうか。ところどころ荒れた屋敷の、小さな明り取りの窓のある狭い部屋だ。