稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 書きかけの手紙の上に載せた手をぐっと握る。紙がくしゃりと丸まった。
 もう少し心の整理をして、書き直そう……。
 ベッドの中に入り、目を瞑る。
 ……ローレル様の屋敷でアレルギーに困ることは1度もなかった。
 お父様がお願いしてくれてたというのもあるけど、男性アレルギーであるということには振れずに伝えただけなのに。
 もしかしたら、私……もっと外へ出ることができるんじゃない?
 舞踏会では倒れそうになったことが何度かあったけれど、それは男性に触れられた時だ。
 近くにいるだけならば、強いアレルギーが出ると言ってもせき込んだりするだけ。体調がすぐれないと言ってその場を離れれば済むことなのかもしれない。
「また、仮病ですわ」
 エカテリーゼ様の言葉が頭をよぎる。
 ……しょっちゅうせき込めば仮病だと思われるのか。それとも体が弱いと思われるか。どう思われるかは分からないけれど……。

 公爵令嬢だと身分を明かしてしまえば、勝手に触れるような真似をする人は減るのでは?体調がすぐれないとその場を去ることに意義を唱えるような人はいなくなるのでは?
 ああ、まって。そうよ。勝手に触れるような真似をするのは良くないことだわ。
 でもローレル様は、立場を利用して爵位の低い女性を思い通りにしようとする男性がいると言っていた。
 ローレル様は困ったことがあれば私の名前を出すようにと言ってくださった。
 公爵令嬢の私にだってそれはできるんじゃない?役に立てるんじゃない?
 ……いえ、まって。
 人一倍男性に触れられたくないと思っている私なら、望まない男性に肩を抱かれることも、腰に手を回されることも、手を握られることも……どれほど女性が不快感を持っているのか知っている。
 アレルギーがなくたって、ぞっとする女性がいると侍女が私を慰めるように教えてくれたことがある。