稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 頭に浮かんでいるのはエミリオの姿。だけど、ダメダメ。「私を男として見てるの?酷いわ!どっからどう見ても女でしょ!……は、無理があるわよね……リリーごめんなさい。私、女だから、貴方の気持ちに答えることはできないわ……」
 というエミリーの姿も思い浮かぶ。

 そうだよ。そうだよ。異性じゃないもの。エミリーは。だから、好きな男性のタイプを聞かれて答えるわけにはいかない。
 きっと私も、色々な男の人を見れば、自分が好きなタイプも分かるようになるんじゃないかな。それで今みたいに、どんな人がタイプなの?と、楽しくエミリーと会話をするんだ。別に、結婚したいということ以外にだって、だれそれがカッコいいだのいう話はみんなしているんだよね。侍女たちの噂話も良く耳にするし。……とはいえ、私に男の人の噂話を聞かせるなといわれたのかここ数年はぱたりと聞かなくなった。お父様が気を回してくれたのかな。

 宿に入ると、机の上に書きかけの手紙とペンを取り出す。
 シェミリオール殿下当ての手紙だ。まずは当たり障りのない挨拶から。祝勝会で渡す予定なので無事に帰還したこと、軍を率いて勝利に導いたことなどを書き記す。
 それから……。
『婚約の申し出のお話ですが、もう一度お考え直しくださいませ。他にもっとふさわしい方がいらっしゃいます。』
 と、そこまで書いてある。続きは、他の誰かに万が一見られても問題ないようにとアレルギーや心が女だということや、これから密会する方法なんかも書かないほうがいいだろうと思ったところで筆が止まってしまいかけていない。
 だけど。
「ローレル様は、皇太子妃の座など望んではいない……」
 ポロリと涙が落ちた。
 だとしたら、私が偽装の婚約者になっても構わないかもしれないという気持ちがよぎる。だけど、問題はそれだけなのか……。