稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 始めは、領地を案内してもらったり色々と出かけて過ごした。1週間もたつと、特にすることもなくなり、二人で屋敷の中でゆっくり過ごすことが多くなった。
 お茶を飲みながら、レースを編んで、おしゃべりをする。
 レースを編む手に視線を落とすと、エミリーのことが思い浮かんだ。
 エミリーもレースを編んでみたいのかな。
 だけれど、エミリーの手は沢山の豆ができて潰れて固くなった剣を握り続けてきた手だった。
 その手で、レースを編むところを見たい。剣を握らなくてもいいように、早く戦争が終わって帰ってきて。
 今、私がローレル様としているように、のんびりおしゃべりしながらレースを編みましょう。
 あ、でものんびりはしばらく無理かしらね?エイミーだったら、めちゃくちゃ必死に一目一目編みそうだもの。
 初心者の時は私もそうだった。一目編むのにも手がつりそうになった。糸を引く力加減もよくわからなくて。
 たぶん、エミリーも始めのうちは会話をしながら編む余裕なんてないわよね。
「あーん、どうして糸が上手く引っかからないの、リリーは魔法を使っているんじゃないの?そんなスピードで編めるはずないわ!」とかいうかも。私も初めのうちはお母様の手は魔法を使っていると思ったもの。
 と、想像するとふっと笑いがこぼれる。
「あら?楽しそうね。どうしたの?」
 ローレル様が思わず声を出して笑ってしまった私に首を傾げた。
「いえ、あの」
 エミリーのことを考えて笑っていたというわけにもいかない。なんせエミリーって誰?と尋ねられて「皇太子」って答えることもできないのだ。
 きっと、私と仲がいい友達だと思えば、ローレル様は私も仲良くしたいわと思うだろう。
 いくら、そのうち、シェミリオール皇太子殿下とローレル様が仲睦まじくなるとしても……。
 エミリーのことは話せない。