稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 ああ、そうか。私が驚いて声を上げたことが、そう受け取られたのか。
「いえ、みっともないとかそう思ったわけではなく、お菓子を作れるということがすごいと思ったのですわ。料理と違いお菓子は料理人でも特別な者……パティシエと呼ばれる限られた者にしか作れないと伺っていますので……。アンナ様すごいです」
 慌てて口を開くと、うつむいたアンナ様が顔を上げてはにかんだ笑みを見せた。

「パティシエほど素晴らしい物はできませんが、クッキーなど簡単な焼き菓子を作っているんです」
「アンナはね、作ったお菓子を孤児院に差し入れしているの!」
 ハンナ様がアンナ様のことを自慢げに話し始めた。
「まぁ、素敵ね」
 ぎゅっと胸の奥が捕まれる思いだ。
 皆すごい。ローレル様も素敵だけれど、アンナ様も立派だ。それに比べて私……。
 皆の話を聞きながら、馬車の中でずっと考えていた。
 私なんか……と考えている時間があるなら、私にも何かできることを考えよう。
 成長するんだ。
 私だって、ダメなままじゃない。
 できることがあるはずだ。
 男性と距離を保つことさえ出来ればアレルギーも大したことがないのだ。酷くアレルギーが出る人には近づかなければいい。
 いいや、近づかさせなければいい。
 腐っても公爵令嬢。私の気持ちを無視して近づける人なんて、国には多くはいないのだから。
 ……ん?
 あら……?もしかして、私、婚約者を探すという目的を取りあえず置いてしまえば、社交界に顔を出せるようになるのでは?
 ローレル様やハンナ様やアンナ様と一緒に行動していればいいんじゃないかしら?ダンスを踊る以外、男性と振れることなど無いでしょうし。
 公爵令嬢にいきなりなれなれしく接してくる男の人なんていない……んじゃ……。
 女性だけのお茶会を催すこともできるでしょうし。
 ……あら?
 あれ?