稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「何かをしたいのに何をすればいいのか焦ったり、周りの人がすべてすごい人に見えて自分がダメな人間に思えて落ち込んだり……全部普通のことよ」
 そう、なの?
「ローレル様も?」
 自信に満ち溢れるようにみえるローレル様も?
「そうね。お母様を見て、とても真似できないと落ち込んでしまったことがあるわ。そうしたら、お母様にどれだけ私の方が長く生きていると思っているの?簡単に追いつかれて追い越されたら困るわと笑われましたわ」
 ローレル様が、私から体を離して、顔を覗き込んだ。
「私は、リリー様よりもお姉さんですからね?私の方がちょっと長く生きてるので、少しはすごいなぁと思ってもらえないと逆に悲しいわ」
「ロ、ローレル様……?」
「もし、自分は駄目だと思ったのなら、変わればいい。努力してなかったと思ったのなら、がんばればいい。落ち込みは、成長への種だわ」
 成長への種……?
「リリー様はきっと、今、急激に心が成長しているところなのね……もしかして、今まで出たことの無かった舞踏会へ出たことがきっかけかしら?」
 自分は駄目な人間だと思うこと……それが成長への種?
 変わればいい、これから、変わっていけば……。
 ずっと狭い世界で守られているだけだった私。男性アレルギーだからと何もしようとしなかった。
 だけれど、こうして友達もできた。一緒に遠くの領地へと行くこともできる。
 舞踏会でダンスをすることはできないけれど、友達を作ることができた。
 エミリーとだって出会えた。

 目の前のローレル様の顔を見る。
 婚約者は探せなかったけれど、友達はできた。
 ぐっと奥歯を噛みしめる。
 エミリーの……エミリオ、いいえ、皇太子殿下の婚約者として相応しいのは私じゃない。
 私が、皇太子殿下と婚約していいはずがない。エミリーの秘密を知っている、ただそれだけの理由で婚約してよいわけがない。