稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 どうやらローレル様は、私が馬鹿にされたような気持ちになって落ち込んでしまったと勘違いしたようだ。
「ありがとうございます。ローレル様に可愛いと言ってもらえてうれしいです」
 ひきつらないように、自然に、笑顔を作ることができた。
 これは小さいころから貴族令嬢として教育を受けていた成果の一つだ。
 上に立つ者が不安な顔をしては、下の者に不安が広がる。
 不快だと受け取られる表情を見せたことで、力関係が動くこともある。
 個人的な好き嫌いを見せてはいけない。などなど。
 いや、今考えると貴族令嬢の中でも上位貴族への教育なのだろう。上に立つ者とか力関係とか、男爵令嬢に関係があるとは思えないもの。
「私も、誰かの支えに慣れるから?」
「何が私にはできるのでしょう……。おいしいお菓子のことならたくさん知っていますが」
 ハンナ様とアンナ様がうーんと首をかしげる。
「うふふ、確かにアンナはお菓子のことならとても詳しいわよね。食べた物の改良点もすぐに見つけてしまうもの。ああ、ほら、前にいらっしゃったときに出したお菓子、もう少し砂糖を減らして、減らした甘さを蜂蜜で補うと寄り甘みが柔らかくなって美味しくなりそうですって言っていたでしょう?それを料理長に伝えて作っていただいたら、何倍も美味しくなりましたわ」
「そうなの!アンナはいつも、こうして食べたらもっとおいしくなるとか、どんな飲み物と合うとかすぐに思いついちゃってすごいんです!それに比べて私には特別な能力が何もない」
 ローレル様がハンナ様の頭を撫でた。
「私にも、特別な能力なんて何もないわ。だけど、何もできないとは思っていないの。何かしようと、何かできるはずだと、考えることが大切だと思っているわ。今回の戦争も、私たちは戦うことはできないけれど、私たちが何かできることがあるかもしれないと思っているの」