稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 そうだ。
 ローレル様は、皇太子殿下の婚約者になろうとしていたんだ。
 皇太子殿下がエミリーで、エミリーが皇太子殿下。と、いうことは……。
 ローレル様は、エミリーと婚約したいと思っているっていうことだ。
 私よりもずっと前から。
 それが、結婚するつもりもない、ただ一緒にいたいという理由で偽装婚約なんて……。私なんかがしていいわけない。
 私、なんか……。
 ローレル様は素敵で。
 美しくて、綺麗で。

 王妃様がするようなティアラを頭にのせている姿を想像する。
 すらりと背が高くて、美しい艶のある髪の上にティアラがきらめいている姿は絵画のように素敵だ。
 その、隣にエミリー……いえ、シェミリオール殿下が王冠を載せて立っている姿を想像する。
「どうしたの?リリー様」
 涙が出るくらい、二人が並んだ姿は美しくてお似合いで。
 涙が出そうになって、うつむく。
 昨晩布団の中での考えにはしゃいでしまった自分が馬鹿みたいだ。
 そんなに簡単な話じゃない。だからエミリーだって「めんどくさいことを片付ける」と言っていた。
 婚約の打診かもしれない。政治的に、簡単に断れない相手からの……。例えば隣国の王女様だとか。例えば、国内の有力貴族だとか。例えば……辺境伯令嬢だとか――。
「えーっと……ローレル様と皇太子殿下は……お似合いだろうなぁ……って」
「そうですよね!絶対ローレル様と殿下はお似合いですよね!」
「二人とも背が高くてすらりとしているし、二人並んだところが見てみたいんですっ」
 私の言葉に、アンナ様とハンナ様が食い気味に言葉をかぶせてきた。
 そのおかげで、私の微妙な言葉のニュアンスはかき消されたと思う。
 似合うのが……まるで残念だと言うような。