稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「シェミリオール殿下バンザーイ、シェミリオール殿下バンザーイ」
 波のような声が、頭に響き渡る。
「シェミリオール殿下バンザーイ、シェミリオール殿下バンザーイ」
 何かローレル様が言っているけれどまるっきり頭に入ってこない。
 青い制服に身を包んだ騎士たちの中心にシェミリオール皇太子殿下のお姿が見える。

 ああ、そうか……。
 殿下がいらっしゃると言う舞踏会で、オレンジ色のドレスをまとっていた人が多かったのはそう言うことか。
 意中の人の瞳や髪の色の物を身に着ける。
 馬が歩みを進めれば、騎乗の殿下も上下に揺れる。
 ふわり、ふわりと、光を浴びて美しいオレンジ色の髪が揺れている。
「エ……ミリー」
 馬車の前の大通りを殿下が通過するときに、思わず声が漏れた。
「シェミリオール殿下バンザーイ、シェミリオール殿下バンザーイ」
 歓声はますます大きくなる。
 いつしか私の頭にその音は届かなくなっていた。
 頭が真っ白になるというのはこういうことなのかと。
 兵たちが北門から出て行き、パレードが終わる。
「リリー様がよろしければ、アンナとハンナもご一緒しても?隣の領地なので、普段は一緒に馬車で移動するんです。……その、今回は公爵令嬢と一緒にと言われて、遠慮してもらったのですが」
 南門に向けて、馬車が動き出したところでローレル様が遠慮気味に切り出した。
「まぁ、アンナ様とハンナ様も?嬉しいわ!私、学園にも通っていなかったので、お友達とおしゃべるする機会も少なくて。色々お話できるなんて素敵」
 はしゃいだ声を出す。
 無理にでも気持ちを上げて行かないと、すぐにでも考え込んでしまいそうだ。
 エミリーが……皇太子殿下だったなんて!
 エミリーが!
「まぁ!公爵令嬢様って、リリー様でしたの?」
「ごめんなさい、黙っていて……これからも同じように仲良くしてくださるとうれしいわ」